モノガタリ

【砂の上の足跡】

ある夜

ある男が夢を見ました。

主と2人で海辺を歩いている夢でした。

空には、人生の様々な出来事が、まるで走馬灯のように

ひとつ、

またひとつと浮かんでは消えて行きました。

そして、その度ごとに、砂の上には2つの足跡がついていました。

ひとつは自分の、

そしてすぐそばには、主の足跡が並んでいました。

やがて最後の出来事が繰り広げられました。

男は砂丘についた足跡を振り返ってみました。

足跡はずーっと続いていました。

しかし、至る所で、足跡がひとつになっているのです。

しかもよりによって、それは人生の中で絶望と悲観にあけくれていた、その時なのです。


男にはわかりませんでした。

そこで主に、こう尋ねました。

主よ、あなたに従うと決心した時、あなたはどんなことがあっても、私と一緒に歩いてくださると、そうおっしゃいました。

しかし、わたしが最も苦しんでいたときに限って、足跡はひとつしかありません。

わたしにはわかりません。

私が心からあなたを求めていた時に、あなたはなぜ私を捨てていってしまわれたのですか?


主は答えられました。

我が子よ、

かけがえのない私の子よ。

愛するお前を決して見捨てはしない。

お前が試練にあって、苦しんでいたとき、その時のあのたったひとつの足跡

それは、

お前を背負って歩いた、私の足跡なのだから…





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